花粉症のような吸引性アレルギー(アトピー)が人でとても多いように、犬や猫も同様に非常に多い疾患です。一般的なアレルゲン(原因物質)は、花粉、フケ、草、木、織物等ですが、空気中に存在する微粒子は全てアレルゲンになり得ます。
人のアトピーでは呼吸器症状が最も多いのですが、犬や猫では皮膚に一番多く症状が現れます。これは、皮膚の痒みの原因がアトピーだけでなく食事アレルギーやノミのアレルギーも関与していることが原因だと言われています。ペットの皮膚の痒みは様々なアレルギー反応が重なって起きるので、我々獣医師がアトピーの治療方針を決定するためには、特徴的な診断上のヒントを色々見つけ出し、総合判断しなくてはならないのです。アレルギー症状のある動物は、必ず「フロントライン・スポット」を定期的に投与してノミの予防も行って下さい。
アトピーの症状は、初期は季節的に現れますが、数年経つと痒みの症状が次第に長期間になって、最終的には1年中痒みが続くようになります。
アトピーによる季節的な痒みは若齢時(1-3歳頃)に見られます。アトピー以外で多いアレルギーであるノミアレルギーはもう少し後(3-5歳頃)から発現します。
アトピーによる痒みの症状は、副腎皮質ホルモン製剤(プレドニゾロンなど)が非常に良く効きます。アトピーによる皮膚病変は、組織生検による病理組織学的検査で特徴的な変化を示します。
アトピーによる皮膚の痒みは特定の場所に発現します。
■ 猫の場合
顔面部(耳の前)および背中やお腹の毛をしつこく舐めて薄くなるタイプが多く見られます。また、「粟粒性皮膚炎・ぞくりゅうせいひふえん」と呼ばれる、小さな粟粒(あわつぶ)状の点々とした皮膚病変(かさぶた状の)が体中に現れる事もしばしばあります。
プレドニゾロン(およびその他のステロイドホルモン製剤)副腎皮質ホルモン製剤は痒みを伴う皮膚炎の治療の「第一線」の最も有効な薬です。はじめは少し強めの用量で使いますが、症状が安定してきたら徐々に用量を少なくして行きます。プレドニゾロンは1日おきに投与すると、ペット自身の副腎皮質ホルモンの分泌を抑制しないでコントロールすることが出来ます。アトピーの犬は数日間で治療に反応します。猫の場合は、長時間作用型の副腎皮質ホルモン剤の注射でコントロールすることが多いようです。猫の場合、錠剤を頻繁に内服させることが大変であることと、副腎皮質ホルモン剤への副作用が少ないためです。また、猫の場合は「アレルギー性の喘息」もこの注射でうまくコントロールできます。
動物の痒みがひどく、プレドニゾロンの用量を増加させなくてはならない場合があります。しかし、プレドニゾロンはホルモン製剤ですので、皮膚だけでなく全身に作用を示し、次のような副作用に注意しなければなりません。
○異常にのどが渇く ○食欲が異常に増進する
○尿失禁(尿を漏らす) ○筋肉が虚弱化する
○免疫抑制 ○流産の可能性
○膵炎の危険性 ○無気力・あえぎ症状
もし、あなたのペットが上記のような副作用があり、その許容範囲を超えるようなら、痒みをコントロールするための療法として、プレドニゾロンの用量を減らしたり、別の薬剤を考慮しなければなりません。上記の副作用は治療初期には多少出ても獣医師が適切に判断した場合は投与を続ける場合もあります。獣医師が適切に判断してプレドニゾロンを処方している場合は、安心して内服を続けて下さい。しかし、副腎皮質ホルモン剤を投与中は、しっかりと動物の症状を観察して、担当医に症状をお伝え下さい。
もし、あなたの犬が、二回以上の長時間作用型副腎皮質ホルモン製剤の注射を続けたり、1年に4ヶ月以上1日おきのプレドニゾロンの内服を続けている場合は、以下のような事項を再度考慮しなければなりません。
【その他の代替療法】
○診断の再検討(より特殊な治療が必要になる場合もあります。)
○専門医に紹介
○そのまま、副腎皮質ホルモン製剤を続けるが、定期的なモニターを行う
猫は犬に比べ、ステロイドホルモン剤に対して副作用が少ないので、3ヶ月に1回程度であれば長時間作用型注射製剤を繰り返し投与することが出来ます。
○ステロイドホルモン剤の代替薬
プレドニゾロンの代わりとなる薬剤は多くありますが、それらのほとんどがステロイドのように良好な反応は望めません。
○抗ヒスタミン剤
この薬はほとんど副作用がありませんが、10-20%の犬にしか良好な反応は認められないと言われています。良好な反応が見られるのは30%程度です。抗ヒスタミン単独で反応の悪い動物でも、プレドニゾロンと併用することで、プレドニゾロンの用量を減らすことが出来ます。猫の場合、抗ヒスタミン剤は、犬に比べかなり効果が高く、良好な痒みのコントロールが出来ますが、猫に1日2回以上内服することが結構大変であることが問題となります。
○脂肪酸製剤
この製剤は、ペットフードに含まれる脂肪分とは別の脂肪です。脂肪酸は皮膚内の炎症性の化学物質産生を阻害するような薬理作用を持つ脂肪です。この製剤は、しばしば抗ヒスタミンと併用して投与することで効果を高めます。
○外用剤
ローション剤、シャンプー剤、軟膏剤なども痒みのコントロール補助剤として有効です。欠点としては、シャンプーやローション剤は週2回から3回しないと効果が期待できないことです。
○シャンプー
アレルギー性皮膚炎のコントロールで最も大切な要素の一つです。常に皮膚を清浄に保ち、アレルギー性の皮膚炎を悪化させる要因である、細菌や、アレルゲンを物理的に落とし、皮膚の代謝を正常な状態に保つ作用があります。しかし、市販のシャンプーや市販の「薬用シャンプー」は石鹸成分が過剰だったり、皮膚の症状に適合しない場合が多いので絶対に使わないで下さい。獣医師が、動物の皮膚の症状に合わせて個別に適切なシャンプー・リンスを処方いたしますので、指示に従って下さい。
○減感作療法
人でも行われているように、ペットでも可能です。しかし、この療法は少々やっかいな治療法で、全ての痒みに対して行うような治療法ではありません。また、減感作療法が効果を発現するまでには6-12ヶ月かかります。
25%のアトピーの犬では反応がありません。(この場合は通常複合したアレルギーを持っているためです。)25%の犬は時々プレドニゾロンの併用が必要となります。1年以上の間、定期的に病院に通院しなければなりません。あなたのペットは減感作療法の適用でしょうか?
検査は、痒みが比較的軽度なシーズンに実施すべきです。何故なら、痒みの激しい時期に検査を実施すると、活発な炎症反応によって、正確な検査結果が得られないことがあるためです。この検査は、少量のアレルギー抽出物質を皮膚に注射します。そして、皮膚の反応を、純粋なヒスタミン(とても刺激性がある)と生理食塩液(無反応)の部位と比較します。
この検査を実施するためには、以下の薬剤の投与を中止しなければなりません
(もし、現在治療中であれば)
デポメデロール(長時間作用型ステロイド剤)8週間
ベタログ(長時間作用型ステロイド剤)6週間
抗ヒスタミン 1週間
外用ステロイド剤(ドルバロンなど)1週間
内服ステロイド(プレドニゾロン)4週間
猫に対するガイドラインは、一般に犬より厳密となります。
スキンテスト(アレルギー皮内反応)
この検査を実施する前には、必ず食物アレルギーに対する「除去食検査」、「攻撃試験」を実施します。この食物アレルギー検査は、アトピーに対する減感作療法より短期間に結果が現れ、もし、動物が食物アレルギーである場合は、食餌療法により早期に症状の改善が認められます。食物アレルギーとアトピーはどちらも同じような痒みの症状があるため、外見では診断が難しいためです。